ワタシの骨なのに
帰りの電車で、レントゲン写真を見ている人がいた。
誰の骨の写真なのかなんてわからないけれど、写真を見ている人はどこからどうみても「フツーのおばちゃん」だった。お医者には見えなかった。それに、お医者だったら電車の中でレントゲン写真なんて見ないと思う。だから、その足首の骨はおばちゃんの骨だと思った。自分で自分のレントゲン写真を見ているんだと思った。
どうやって入手したんだろう!?
ワタシは去年の春、整形外科でレントゲン写真を撮った。
その時はそのまま帰ったけれど、しばらくして「レントゲン写真をお父さんに見せたい!」と思い、病院に写真を借りに行ったことがある。
少し前にこの病院でレントゲン写真を撮ったこと、その写真を貸して欲しいこと、診察券の他に保険証と免許証を持ってきたこと...を、受付の人に伝えた。
「別の病院で診察なさるんですか?そちらの先生が何かおっしゃったんですか?」
「そうじゃありません。家族に見せたいので、持って帰ってスキャナで取り込みたいんです。家はスグそこなので、今日の診察が終わる前には返却できますから。診察券と、保険証と免許証を持ってきました」
受付カウンターの中には何人もおばちゃんがいて、驚いた顔をしたりクスクス笑ったりしている。なに?なんでヒソヒソ話しするの?なんでそんな態度なの?なんで笑うの?
「そういう事はできないんですよ?決まりなんです」
決まりってなに?どうして貸してくれないの?
別にタダで焼き増しをお願いしてるんぢゃないのよ?小一時間貸して欲しいだけなのにそれもダメなの?スキャンしても減らないよ?免許も持ってきたし、それよりなにより、そもそもワタシの骨なのに。
「どうしてダメなんですか?ワタシの写真だし、身分証明証も持ってきました」
どうして更にヒソヒソ話しするの?どうしてバカにしたように笑うの?自分で自分の骨を見ちゃダメなの?家族に見せちゃイケナイの?誰に見せるかはワタシが決めても良いでしょ?ワタシの骨なんだから!
「決まりなんです」
ものすごーくバカにされた気分になって、それ以上何も言わずに帰ってきたコトを、電車の中で(たぶん)自分のレントゲン写真を見ているおばちゃんを見ていて思い出した。
ワタシの骨なのに。



