「申し訳ございませんっ!!」
駅のホームを、階段に向かってノンビリ歩いていると、エスカレーターのすぐ手前に何か落ちている事に気が付いた。続々とエスカレーターに向かう人たちは見向きもしないので、どうでも良さそうな紙切れなのかなと思いながらだんだん近づくと、それが定期券だとわかった。
周りの人はみんな定期券に気が付かないみたいで、誰も拾わない。
心配というかなんというか、とにかくそういうキモチになったので、小走りで拾いに行って、そのままエレベーターに乗る。なんともなしに、定期券を見た。
「買ったばっかりなんだ。」
「えっ、あっ、えっ、6桁!?」
買ったばかりの半年定期、お値段、14万円。
これは、何がなんでも絶対に落としちゃイケナイ定期券だ。ワタシの2万円だって落としちゃダメだけど、これはもう、とても大切にしなくちゃイケナイ定期だ。
改札の手前には、ちょっとボロいベンチがある。
サラリーマン風のおじさんが、そのベンチに腰掛けて、カバンの中をゴソゴソしたりお財布の中身を点検していた。そのモーレツな勢いにピンときて、声をかけてみる。
あのぅ。
もし違ったらごめんなさい、定期券、落としたんですか?
「あっ・・・」
これですか?
エスカレーターの下に落ち・・・
「申し訳ございませんっ!!」
あぁ、良かった。
ごめんなさいね、ちょっと見ちゃったんですけど、まだ買ったばかりだから、なんだか心配になっちゃって。じゃあ、失礼し・・・
「申し訳ございませんっ!!」
「申し訳ございませんでしたっ!!」
ものすごくハキハキとした大きな声で、何度も謝られました。