ビールに、氷をひとつ。
ワタシが働いていた頃の来店頻度は超がつく程ではなかったけれど、Nさんというお客さんは、オオニシさんの解説によると、昔からお店にずっと通ってくれているお客さんということでした。
その人は最初にいつも、ミラーライトを頼みます。
お店のミラーライトは瓶で、普段なら抜栓したミラーと空のビールグラスを出すのだけれど、Nさんのグラスにはいつも、氷を1つ入れる事になっていました。
彼は、自分が「昔から通っているけれど頻度は高くないお客さん」である事を正しく理解していて、顔馴染みの従業員には黙ってミラーを注文し、そうでない従業員には、氷をひとつグラスに入れて欲しいと、少し申し訳なさそうに頼んでいました。
ワタシも最初は氷をリクエストされ、とっても驚きました。
お店のビールはちゃんと冷たいから大丈夫だよ?ビールに氷を入れるだなんてアリなの?誰もそんな事してないよ?ビールに氷を入れるの?氷を?ビールに?
しばらくするとNさんとも顔馴染みになります。
彼と一緒に来る女性とも妙に親しくなり、ある日、氷を入れるのってどうなの!?と、募る不信感をぶつけてみることにしました。
ビールに氷を入れると味がまろやかになる。
Nさんは控えめにそう教えてくれました。観察してみると彼は、氷が小さくなる前にミラーを飲み終えている様子。ほんの少し氷が溶けた「その感じ」がポイントなのかなぁ...と、(今となっては嘘みたいだけれど)ビールが飲めなかったワタシは、なんとなーく思ったりしました。
・・・で。
家に帰ってエアコンをつけずにビールを飲みながら編み物をする...というのが、ワタシの極ありふれた日常なのですが、編み物に夢中になるとグラスになかなか手が伸びず、瞬く間に、ビールが温くなるワケなのですよ。修行不足ですから、温いビールはイマイチなのですよ。
そこで、ビールに氷です。
チャレンジした結果と言えば、毎日飲んでいる「一番搾り」が、なんだかよくワカラナイような、シャバシャバした味のアヤシイ銘柄ビールになりました。